今回はニコンのズーム実体顕微鏡SMZを修理してみたいと思います。

この機種はコンパクトで使い勝手が良く非常に人気のある機種ですが、
5,6年も使用 すると光学系も曇ってきますし、グリスも固まってきますの
で、ちょっとこのままでは使えません。

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不具合現象

@接眼レンズが汚れています。また視度補正環の動きもかなり
重くなっています。

 

Aズーム環の動きが異様に重くなっています。途中でひっかかる現象も
 あります。

Bフォーカスアームの上下動は摺動面のアルミと真鍮が互いに食つき
 あって完全にスタックしています。

Cベース架台は塗装が剥げて、錆が発生しています。

D接眼レンズを外して中を覗くと、ズーム対物レンズ、鏡筒プリズム
 にクモリ、カビが見えます。

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上下動フォーカシングアーム

@摺動面は完全に食い付いて上下動ハンドルではまったく動かない
 ので万力を使ってかなり強引に分解しました。
 

 

A摺動面はかなり荒れているのでオイルストーンを使って滑らかに
 します。 最終的にオスアリとメスアリを組み合わせた時、自重で
 スムースに落下する様に摺り合わせを行います。

 

 

 

Bアリ、軸受けのグリスを拭き取り新しいグリスを塗布します。

Cラックとピニオンの間隔を調整します。

D右側のハンドルの樹脂にクラックが入っていたので交換しました。

Eベースを塗装して架台部は完了です。

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ズーム対物レンズ

@ブーム対物レンズを強い光を通すと白く汚れが見えます。またガイド可動 部から塗装カス、金属ゴミが内部に多く落ちます。

 

A右図まで分解すると全ての光学部品の表面をきれいにする事ができます。

 ただし接合レンズの貼り合わせ面が劣化する場合があり、この場合
 はあきらめます。

 

Bズームレンズのガイド面、摺動面の傷、バリを修復しグリスを新しく
 すると殆どの場合ズーム環もスムーズに動く様になります。

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プリズムボックス

@プリズムボックスもここまで分解すると全面クリーニングする事
 ができます。

 

B一見きれいに見えるプリズムも光を通すと汚れが見えます。

 

 

 

 

C洗浄液でクリーニングするとこの様にきれいになります。

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総合調整

光学調整に入ります。調整箇所は以下のとおりです。

@ ズーミング時の同焦調整
   ・高倍でピントを合わせ、低倍にズームした時ピントがずれない様に
    調整します。

A 左右同焦差調整
   ・右側光路と左側光路の焦点位置(スリーブ高さ)がほぼ一致する
    様調整します。

B 眼福調整時の回転芯調整
   ・眼の幅の間隔を変えた時、中心位置がずれない様調整します。

C ズーミング時の光軸芯調整
   ・ズーミングした時、中心位置がずれない様調整します。

D 左右光軸芯調整
   ・右側光路と左側光路の中心位置が合致するよう調整します。

E倒れの有無確認
   ・左右の像が回転していないかどうか確認します。

Fその他確認
   ・像のよじれ、ズーミング時のジャンプ、倍率誤差がないかどうか
    確認します。

 

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完成

@これで完成です。ここまでやると顕微鏡がシャンとして見えます。
 機能的には新品とそんなに変らないと思います。(主観)

右は修理前と後でのテスト撮影です。違いが歴然と分ります。